今年のゴールデンウィークは、日本の悪天候がそのままハワイへ流れてきて、日本からの旅行者もストレス気味だったのではないでしょうか。
その頃、僕とニック(ニック加藤)は撮影でハワイ島へ行っていたのですが、ヒロは寒くて夜なんか暖炉に火を入れてました。
もちろん格好も長袖に長ズボンという「ここは本当にハワイかいな」という日が続いて、結構大変な撮影となりました。
撮影カット数もかなりの量を必要とするし、自然光を使うショットがほとんどで、雲に隠れてしまった太陽が顔を出すまで何十分も待たなければならなかったりと、撮影している時間よりも、お日様待ちの時間のほうが長いロケになってしまいました。
でもそんななか、ちょっとした時間を見つけては、ニックとっておきの海水温泉や湧き水と海水の混ざった摩訶不思議天然プールなどで気持ちのリフレッシュをはかったりして、約1週間のロケも無事終了しました。
決められた時間のなかで、しかも野外の撮影というのはすべてが天気次第。
クライアントからの予算も決まっているし「天気が悪いからもう2、3日必要です」なんてバブル最盛期みたいな贅沢は聞いてもらえない。
いくらアーティストのCDジャケットでもわがままはきかない。
こんな時はやっぱり気心も知れて、しかも信頼できるスタッフでなければ、お互い知らず知らずストレスも溜まってしまいます。
しかし、いつも思うことなのだが、ニックのハワイに関する知識には本当に敬服する。
オアフ島の裏の裏まで知りつつ、ここ数年はハワイ島さえも網羅しつつある。
僕やデザイナーの要求以上のロケーションを見つけるし、島の情報はいちはやく手に入れる。
ハワイの光や空気をそれ以上の形でフィルムに押さえてしまう。
年に1、2回は必ずあるある撮影なので、ありとあらゆる駒を持ってなければ到底追い着かない。
仕事以外でも常に観察していなければ、クライアントの要求に応えることはできないだろう。
ハワイにはニックのほかにもたくさんのコーディネイターたちがいる。
彼等も日常のなかで目を凝らして車を走らせているのだろうと思う。
海、空、緑とそれほど違いがないように目に映る景色のなかから、これといった場所を探しておく作業は、想像しただけでも気が遠くなる。
わがままで、偉そうで、傍若無人のクライアントも多いと思う。
ハワイのコーディネイターは半端な気持ちじゃ務まらない。
肌寒いヒロの町で、暖炉の火を見ながらそんなことを考えていました。
アロハエクスプレスNO.45(1998年8月15日発行)「杉山清貴の楽園倶楽部」より